あのネオンは誰を照らしているのか
繁華街にデカデカと輝くホストクラブの看板を見たことは皆さんもあるだろう。実際に入店した人は少なくてもホストクラブの存在、その業態をほとんどの人は知っている。男性スタッフ（ホスト）が女性客に対して酒類の提供や会話を通じて仮初めの幸せを提供する場である。ここで提供される酒類の価格だけを見ると完全なるボッタクリであり、Amazon販売価格の10倍以上の価格がつけられている。つまり単純にお酒を楽しみに行く場合、最低のコストパフォーマンスを叩き出すことになる。この異常な価格はホストによる接客料金として説明される。正常な金銭感覚を持っている人間には理解できないであろう。
例えば10万円の注文を入れる場合、その注文の原価は10％以下、1万円以下である。ここで原価厨だ原価厨だと思われるかもしれない。しかし、これは一般企業が商品を開発販売した商品の原価とは大きく異なる。ホストクラブで販売されている酒類は、その全てがネット通販で今すぐ購入可能だ。まさしく水商売、高額転売である。
通常まともな人間相手にそんな転売は通じない。繁華街の地下に華やかな一室を作り、そこに価格10倍超高額自動転売機を設置しても利用者は皆無だ。ここにホストという劇薬を投入することでこのビジネスは成立している。この劇薬の効能は凄まじく、依存が始まると客はホストという劇薬に対して金銭を供給するだけの機械になる。
閑話休題。ここから一旦ホストクラブの業態を俯瞰してみる。ホストクラブは日本発祥の文化であり、現在でも日本が最大市場である。他国ではアジア圏内にごく少数存在しているのみであり、日本でのみこの異常なビジネスが成長している。
ホストクラブへ行かない大多数の人々は、ホストクラブがキャバクラの性別反転版であると考えるはずだ。表面的な業態をみればその考えは間違いではない。問題は客の年齢である。店員であるホストの年齢はキャバクラのそれと同じく20代がそのほとんどを占める。しかし、キャバクラの客の主な年齢層が40代以降の世代であるのに対し、現在ホストの主な客の年齢層は10代後半〜20代前半である。私にこの文章を書かせている怒りの源泉はここにある。
40代以降の男性と20代前半女性の経済力には歴然とした差がある。この両者に同額の支払いを行わせるのは本来不可能であるのだ。そこで導入された悪しきシステムが「売掛制」いわゆる「ツケ」である。これは基本的にホストクラブのみで機能している制度である。これによって本来の支払い能力を大きく超える金額を使わせることが可能になる。あくまでもツケであるため、使った金額に対して支払い義務が生じる。しかしツケを使った時点でもう客の資金は底をつきている。そうなった場合に一般的な20代女性が短期間で大金を用意する方法は一つしか無い。人的資源という言葉そのまま、「身体」を金に変えるしか無いのである。
性風俗で身体を売ることで精神をすり減らし、依存したホストに金を貢ぐ事で承認欲求を満たす。これを地獄のスパイラルと呼ばずになんと呼ぶのか。完全に本末転倒である。客の精神と身体がぶっ壊れるまでこれは続くのだ。一度この循環を作り出せばホストに金が入り続ける。一方の資産をもう一方が搾取し続ける状態はビジネスとして公平とは言い難い。金銭の対価として受け取るものが安らぎとか幸せといった実態を伴わないものだからである。依存対象が酒や薬物といったモノではなく、人間であるという点で他の依存症とは大きく異なる。アルコール依存症患者の口元に、酒が意思を持って近づいてくるようなものである。一度依存状態に陥った場合、この誘惑を自分の意志で断ち切ることはほとんど不可能である。
客観した場合、ホストの幸福と客の幸福は反比例していく。身体を売って作った金を全てホストに貢いでも尚、私は幸せだという客がほとんどだ。これを洗脳と言わずになんというのだろうか。
一瞬でもホストが介在する女性の貧困は、作り出された貧困である。本来存在しなかった貧困である。そもそも女性は男性とは違い、基本的に異性を買う必要は無い。黙っていても異性は寄ってくる。ではなぜホストへ依存する女性が生まれてしまうのだろうか。それはホストが女性を洗脳し依存状態を作り出す技術に秀でているからに他ならない。
100人の女性がホストクラブに初来店した後、常連となるのは2〜3人であるというデータがある。全てのホストクラブは初来店時は5000円飲み放題時間制などの良心的な価格設定を行っている。常連にはならない90％以上の女性はこの時点でホストクラブの危険性、依存性に気づき、初来店を最後にもう店に訪れることはない。
では一体、どのような女性がホストクラブ依存に陥り、破滅の一途を辿っていくのか。それはいわゆる「メンヘラ女」に他ならない。表現があまり良くないことは謝りたい。だが、事実は事実として記したい。
ホストクラブはメンヘラ女を食い物にし風俗嬢へと落とし、風俗嬢を食い物にし、更なる深みに突き落とす貧困搾取ビジネスである。
今回のンゴスルポはここまで。続報を待て。
