ルッキズムの終着点はどこだ

加速するルッキズム

最近ルッキズムという言葉を頻繁に聞くようになった。外見至上主義のことである。先日高須クリニックの高須幹弥大先生が「AI美女は人類を不幸にする」という内容の動画をYouTubeにアップしていた。そこでは現実に存在しないレベルのAI美女の視覚情報を脳に入れ続けると美醜の比較基準がAI美女になってしまうため、現実社会の女性に興味を失ってしまうということを解説していた。

美醜の判断は比較で決定する。もしあなたが一人の女性しか人生で見たことがなかった場合、その女性は世界で最も美しい女性になる。ルッキズムの完全勝者だ。だが現実にはそんなことはありえない。かつて比較対象となり得るのは同じ村の人間だけだった。交通網、芸能文化が発達するにつれてその比較対象は拡大した。そしてインターネット、SNSの普及によりルッキズムレースは全世界の人間を相手取っておこなうデスレースになった。そして現在、ルッキズムレースは仮想世界の存在をも相手取ろうとしている。

実際にAI美女の画像を見るともはや現実の女性と区別がつかない領域に到達している。しかもそのクオリティは毎日加速度的に上昇している。今までもアニメや漫画のキャラクターへ恋心を抱くガチ恋勢は存在した。しか し、彼らは本当はそれがフィクションであることを当然理解していた。そもそもデフォルメされたキャラクターと現実を完全に混同することは根本的に不可能である。

それが画像生成AIの急速な進化によって変わってしまった。簡単で抽象的な単語を入力するだけで、一瞬で現実と見分けのつかない好みの女性を生成できる。現在は短時間の動画を作成することも可能になった。これに対話型AIを合わせて音声で違和感なく会話することができるようになる日はもうすぐそこだ。SFのような話だがこれは現実だ。

そして、その時代が到来すれば、恐らく現実の人間関係に大きな影響を与えることになるだろう。人々は現実世界の異性に対する興味を失い、自分好みのAI美女や美男との関係に依存するようになるかもしれない。その結果、人間同士のコミュニケーションが希薄化し、対人関係のスキルが低下する可能性がある。さらに、AI美女や美男との関係に没頭することで、人々は自分の内面や他者の内面に対する関心を失い、ルッキズムがさらに強化される恐れがある。

また、AI美女や美男の普及は、美醜に関する社会的なプレッシャーも増大させるかもしれない。現実世界の人々は、自分の外見がAI美女や美男と比較されることで、自己評価が低下し、自尊心が傷つくことがあるだろう。特に若い世代は、SNSやインターネットで多くの時間を過ごすため、AI美女や美男の影響を強く受けることが予想される。これにより、過度のダイエットや整形手術、メイクなどの外見に対する執着が増加し、精神的な健康問題や身体的な健康問題が引き起こされる恐れがある。

このような状況を受けて、AI美女や美男の普及に対する議論や規制が必要になるかもしれない。例えば、AI美女や美男の使用に年齢制限を設けたり、使用時間を制限することで、現実世界の人間関係への悪影響を緩和することができるかもしれない。また、教育機関や家庭では、外見だけでなく内面や才能を重視する価値観を子どもたちに教えることが重要だ。これにより、ルッキズムに対する意識改革が進み、人々の対人関係や自己評価が健全に保たれることが期待される。

ここまでが一般的な見解であり、今後の問題提起もこの方向でされていくだろう。男性の草食化、少子化が加速することは一つたりとも利益を生まない。間違いのない正論だ。だが、救われる人間はいる。そう、弱者男性だ。私も所属するクラスターである弱者男性だ。AI美女によって弱者男性は救済される。

狂人か落伍者か

弱者男性が現実世界において美女と交際することは不可能だ。もちろん「そんなことはない!自分磨きして自分の価値を高めろ!」という声があるのは事実だし正論だし強者の論理だ。そんなアドバイスを聞き受けて現状を打破できる人間はそもそも弱者ではない。平均をとったときに不可能だということだ。落伍者たちにとって華やかな存在は敵意を向ける対象でしかないのだ。手に入らないなら興味が無いと言う。手に入らないならぶっ壊す。それは落伍者の自己防衛だ。

手に入らないならぶっ壊す。この思考の行き着く先が昨今増加している「無敵の人」犯罪である。自分より幸そうに見える人間全てが憎悪の対象となり、凶行に走る。

手に入らないなら興味が無いと言う。この思考の行く先は草食化だ。そもそも興味が無いというスタンスを取ることで、何かを欲しているけれど手に入らない哀れな存在として見られることを回避している。あくまでも興味が無いと言っているだけで本当は興味ありありだ。見たくないものに蓋をしているだけなのだ。

こうして比較してみると無敵の人になるのだったら草食化したほうがよっぽど良い。草食化した人間に無理やり肉食を押し付けた結果、無敵の人化する可能性もある。

AI美女はこうした草食化した無敵の人予備軍の弱者男性を、電脳空間に閉じ込めて完全に無力化することが可能である。辛い現実からは目を背けて夢の世界に死ぬまで浸る。そんな選択肢が当たり前になる世界はすぐそこまで来ている。

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